除脂肪体重増量に向けた食事のポイント

オフ期は、各チームでフィジカルトレーニングを中心とした体づくりが行われるでしょう。そのベースとなるのが増量に向けた食事です。

下記でも、野球選手の特徴として除脂肪体重(体重から脂肪を除いた重さ)が重いことを紹介しましたが、このことはバットスピードの速さや球速にも影響します。

野球選手の体重~除脂肪体重や体脂肪に着目した体づくり~

つまり、ただ体重を増やせばいいわけではなく、その中身が大切なのです。
例えば、5㎏増量してその中身が脂肪1㎏・除脂肪体重4㎏だった選手と、10㎏増量して中身が脂肪9㎏・除脂肪体重1㎏だった選手を比較すれば、後者のほうが体重増加量は多いにもかかわらず、前者よりもパフォーマンスが向上するかと言えばそうではありません。むしろ、体には負担が大きくなり、足腰のケガを起こしやすくなってしまいます。

【高校野球~】足部の怪我を防げ!理想的な体脂肪率からトレーニングまで

目次

  1. トレーニング効果を高めるタンパク質摂取のポイント
  2. 「タンパク質」多量に摂取することは決していいことではない
  3. 1回あたりの食事でどの程度の「タンパク質」を摂取するか
  4. 「タンパク質」トレーニング後に速やかに摂取すること
  5. 「タンパク質」の種類を考えること
  6. 「タンパク質」とともにビタミンBとCも摂取すること

では、ただ体重を増加させるのではなく、除脂肪体重を増やすためには、食事で何に気をつければいいでしょうか。
もちろん、ご存じのようにタンパク質(プロテイン)が必要です。
ただし、タンパク質をたくさん摂取すればいいのかというと、そうではありません。

図Aにアスリートのタンパク質摂取のポイントを示しました。

アスリートタンパク質

1つ目のポイントは、毎日多量の摂取をすればいいわけではないということです。
タンパク質の摂取目安としては「体重あたり1.5~2.0gの摂取(例:体重70㎏の選手であれば105~140g)がいい」と言われています。
インターネットや本などを参考にして、どの食品に、どの程度のタンパク質が含まれているかについて知っておくといいでしょう。

2つ目は、1回あたりの食事でどの程度のタンパク質を摂取するかということです。
こちらについては、1回の食事で15~25gのタンパク質を摂取することが望ましいという見方があります。
トレーニング後の1回の食事で、どのくらいのタンパク質を摂取すると筋肉のタンパク質合成(筋肉をつくること)が起こりやすいかを調べた実験があります。
それによると、20gまでは筋肉のタンパク質合成が高まりますが、それを超えると以降はタンパク質合成に大きな変化がなかったという報告があります。

タンパク質 悪い例

図Bを見てください。これは一般的な昼と夜の食事量が多いパターンのタンパク質の摂取方法です。
筋肉のタンパク質合成は、体内に必要量のタンパク質(目安は20g)がある場合に起こります。図Bの場合は昼と夜の時間しか筋肉のアップデートが起こっていません。

タンパク質良い例

一方の図Cは、1日5回に分けてタンパク質を摂取しており、どの時間帯も筋肉のタンパク質合成の必要量である20g以上が維持されています。すると、常に体内でタンパク質合成が行われていることになり、除脂肪体重の増加につながりやすくなります。

3つ目は、トレーニング後に速やかに摂取することです。
練習後に部室などに長く滞在し、学校から自宅まで1時間かけて帰宅すると、筋力トレーニングをしてから2時間程度も経過してからの食事になります。これでは筋肉がタンパク質を欲しがる時間を逃し、筋肉を形成するチャンスが限りなく「0」になってしまいます。
筋肉がタンパク質を最も欲しがっているのが、トレーニング後45分以内と言われています。筋力トレーニング後、早期のタンパク質摂取を心がけましょう。

4つ目は、タンパク質の種類を考えることです。
特に必須アミノ酸の一つであるロイシンは、筋肉のタンパク質合成を促進します。このロイシンは動物性タンパク質です。
プロテインパウダーにも、吸収が早いホエイプロテイン、吸収がゆっくりなカゼインプロテイン、大豆を原料とした植物性のソイプロテインなど、さまざまな種類があります。
タンパク質であれば何でもよいわけではなく、それぞれのメリット・デメリットがあるので、それらを考慮してプロテインパウダーの選択をしてください。

5つ目は、タンパク質とともにビタミンBとCも摂取することです。
タンパク質は体内でアミノ酸に分解されて吸収されます。しかし、ビタミンBが足りないとタンパク質が分解できないので、吸収されずに排出されてしまいます。また、ビタミンCはタンパク質合成能力に必要なものです。
したがって、ただタンパク質を摂取するだけでなく、そのサポートとして必要なミネラルの摂取も忘れないでください。

体を大きく!管理栄養士が考えたおすすめレシピ

この記事の作成者


笠原政志笠原政志
Masashi Kasahara

国際武道大学体育学部・大学院 准教授
博士(体育学)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
日本トレーニング指導者協会認定上級トレーニング指導士

千葉県習志野市出身。スポーツ選手の傷害予防と競技力向上に関するコンディショニングを科学的に捉えたアプローチを実践し、現場と研究の橋渡しの役割を担っている。特に今まで経験値による指導が多かった野球選手のコンディショニングについてを、客観的に示した上でのアプローチ方法について研究したものを現場に提供している。


関連記事

  1. アイスバスのやり方

    暑熱環境下でのリカバリー“アイスバス(冷水浴)

  2. 股関節内旋

    【高校野球~】投球障害予防!下半身をチェックしよう

  3. 高校・大学・プロ野球/太ももの前の柔軟性があるか

    太ももの前の柔軟性があるか

  4. 走り込みの前に

    【高校野球~】走りこみの前にチェックしておきたいポイント

  5. 高校・大学・プロ野球/しっかりした捕球姿勢がとれるか

    レギュラーの基本条件!しっかりした捕球姿勢がとれるか

  6. 肩甲骨トレーニング

    【高校野球】投球障害に対する肩甲骨周囲筋のトレーニング方法