筋力トレーニングの基礎知識

筋力トレーニングには、最大出力を高める「最大筋力向上」筋肉を太くする「筋肥大」より速く強く力を発揮するための「パワー向上」、そして「筋持久力向上」と、その目的がいくつか存在します。したがって、ただ重い負荷を担いでトレーニングをすればいいというわけでありません。
また、「強化」を狙いとしたトレーニングと「調整」を狙いとしたトレーニングは別物ですが、現場では混同されていることが多くあります。

そこで今回は、筋力トレーニングの効果をより高めてもらうために、野球選手として抑えておきたい筋力トレーニングの基礎知識について紹介します。

目次

  1. 目的別のトレーニング条件
  2. 「筋力向上」を目的としたエクササイズ
  3. 「筋肥大」を目的としたエクササイズ
  4. 「最大パワー向上」を目的としたエクササイズ

まずは、目的別のトレーニング条件について整理しましょう(図)。目的別トレーニング

※RM:Repetition Maximum(最大反復回数)
ある重量(負荷)に対して動作をくり返すことができる最大回数。1RMは1回しか反復できない重量(=最大挙上量)を示す。
自身のおおよその最大挙上量を知りたいときには以下の計算式を使用する。
使用重量×{1+(reps÷40)}=最大挙上量
例:50㎏の重量を最高8回上げられる(reps)場合
50×{1+(8÷40)}=60
最大挙上量(1RM)は60㎏だと分かる。

最大筋力を高めるためには、筋出力にかかわる神経系を最大限に動員させることが必要になります。そのためには、最大筋力発揮ができる負荷(最大挙上量)の85~100%程度の重量を用いて、1~5回を全力で反復することです。
また、1セットごとに最大筋出力を発揮することが求められるため、セット間には2~5分の休憩をとり、2セット以上実施する方法で行うことが理想です。

筋を太くする筋肥大のトレーニングでは、成長ホルモンの分泌をより促すため、筋力トレーニングによって筋をいわゆるパンプアップした状態にすることが必要になります。
そのためのトレーニング負荷の目安は、最大筋力発揮ができる負荷の70~85%程度の重量を用いて、6~12回の最大反復をすることになります。また、成長ホルモンの分泌を促すためにも、セット間の休憩時間は30~90秒と比較的短い時間とし、3セット以上実施する方法で行うことが理想です。

最大パワーを向上するためには、短時間で素早くエクササイズを実施することが求められるため、力とスピードの両方を向上させることが必要になります。
そのためには、最大筋力発揮ができる負荷の60~70%の重量で、10~20回実施することです。また、筋力向上と同様に1セットごとに全力を出し切らなければならないため、2~5分の休憩をはさんで、2セット以上実施する方法で行うことが理想です。
なお、短時間で素早いエクササイズ動作を行わなければならないため、スクワットなどでの降ろす動作は1~2秒と比較的速く、そしてその後の挙上動作を最大速度で行うことを忘れないでください。

この記事の作成者


笠原政志笠原政志
Masashi Kasahara

国際武道大学体育学部・大学院 准教授
博士(体育学)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
日本トレーニング指導者協会認定上級トレーニング指導士

千葉県習志野市出身。スポーツ選手の傷害予防と競技力向上に関するコンディショニングを科学的に捉えたアプローチを実践し、現場と研究の橋渡しの役割を担っている。特に今まで経験値による指導が多かった野球選手のコンディショニングについてを、客観的に示した上でのアプローチ方法について研究したものを現場に提供している。


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