球速アップと障害予防に関して ④ 【フォームと球速】

今回で4回目の球速UPに関する内容となります。

ここまでは、球速UPのための体作りとして身体組成・プライオメトリックエクササイズについて解説していきました。
今回は、フォームについて解説していきたいと思います。

フォームに関しては、当然個別性があり、球速上がったからと言って成績の向上が約束される訳ではありません
さらに、球速UPだけを求めると障害発生の原因となることもあり注意が必要です。
これらを前提に、球速が低下しやすいフォーム・向上しやすいフォームについて過去のデータと現場での経験を交えて紹介していきます。

 

目次

  1. プロ野球投手と高校生投手の球速・フォームの違い
  2. 身体の開きとは?
  3. 「ステップ時の軸足股関節」の使い方と「球速」の関係
  4. 「ステップ時の軸足股関節」の使い方
  5. 「踏み込み足」の膝の角度について
  6. 「踏み込み足」の膝屈曲角度~プロとの比較~
  7. キャッチャーミットを凝視するべきか?
  8. まとめ

下の図は、プロ野球投手と高校生投手の「球速・フォームの違い」を分析した内容になります。

プロと高校野球

当然、プロ投手の方が高校生投手より「球速」が速い結果となっています。

フォームに関して、「非軸足が地面に設置した位置」を0%、「ボールをリリースした位置」を100%として、体幹・骨盤の動きを解析しています。

結果は、
①体幹のバッター側への回旋開始のタイミング
②骨盤・体幹の最大回旋速度に至るタイミング
いずれも高校生の方が早く運動が引き起こっています

つまりこの結果は、高校生の方が骨盤から体幹を含めた“いわゆる身体の開き”が早かったという可能性を示しています。

内田らは、
「ステップ時の軸足股関節の屈曲角・外転角」の不足が、「ステップ脚接地後の骨盤回旋運動のタイミングTPR(Timing Pelvis Rotation)」を早くする可能性を示しています。

内田ら

つまり、「骨盤の早期の開き」は、ステップをする段階で既に決まってしまう可能性があるのです。

【高校野球〜】投球障害予防!体の開きを抑えるトレーニング方法

「ステップ時の軸足股関節」の使い方と「球速」の関係についてです。

Kageyamaらの報告では、大学生の投手を「球速が速い群」と「球速が遅い群」に分け、フォームの違いを分析しています。
結果は球速が速い群は遅い群と比較し、ステップ時の軸足股関節」が外転位であることを明らかにしました。

かげやまら

つまり、「ステップ時の軸足股関節」が内転方向に入ると、早期に骨盤が回旋してしまうだけではなく、“球速”にも影響を及ぼしてしまう可能性があるのです。

下図は社会人投手2名のフォームの比較ですが、最速150km/hの投手は最速136km/hの投手と比較し、「ステップ時の軸足股関節」の使い方が明らかに違います

違い

投球フォームを動画撮影し、これらの点を注意深く観察することが重要になります。

ステップ足の使い方の次は、「踏み込み足」についてです。

下の図は、投手52名(平均年齢15.2歳)の球速と投球フォームの関連を調査した報告です。
左図は、「肩関節の最大外旋位における膝の踏み込み足の膝屈曲角度」と「球速」との関連を示したものであり、
右図は、「ボールのリリース時における膝の屈曲角度」と「球速」との関連を示したものになります。

踏み込み足

それぞれのフェーズにおいて、「踏み込み足」の膝屈曲角度が大きくなる程、球速は遅くなるという結果となっています。

【高校野球~】投球障害予防!下半身を安定させるポイントとは?

実際に、プロ野球投手の「踏み込み足」の膝屈曲角度を見てみると深く曲がってないことが確認されます(下図の真ん中・右)
一方、社会人野球の最速136km/hの投手(下図の左)の「踏み込み足」の膝の屈曲角度を確認すると
プロの投手と比較し、膝が深く曲がり、体幹が前方へ突っ込んでいる様子が確認されます。

膝の角度

体が前方へ突っ込んでしまい、球速が速くならない投手は、「踏み込み足」の膝の曲がり角度に注目することが重要です。

「キャッチャーミットを凝視するべきか?」

よくこのような質問を受けます。

田中らは、キャッチャーミットを凝視することで、球速が遅くなり、体幹の回旋が始まるタイミングが早くなることを報告しています。

キャッチャー

キャッチャーミットを見続けることで、頸部がバッター方向へ回旋し、その分体の開きが早くなることが推測されます。
身体の開きが早いケースの投手に対して、一度キャッチャーミットから視線を離すことで、開きが抑えられ、球速がアップすることは珍しくありません。

ここまでをまとめると

  • 競技レベルが上がるほど、骨盤・体幹の打者方向への回旋開始のタイミングが遅い
  • 早期骨盤回旋には非軸足のステップ時の軸足股間節の使い方が関連している可能性がある
  • ステップ時に軸足股関節が外転位である程球速が速い
  • 肩関節最大外旋位・リリース時の踏み込み足の膝屈曲角と球速は関連する
  • 常にキャッチャーミットを見続けることで体の開が早くなる・球速が落ちる可能性がある
  • フォームだけが球速に関連する訳ではない

下記もご参照ください!

【高校野球〜】球速アップの方法・トレーニング論

この記事の作成者


小川哲広小川哲広
Tetsuhiro Ogawa

理学療法士
https://linktr.ee/Te2.lbp

北星病院 リハビリテーション科 主任
JA 道央 野球部 トレーナー

北海道札幌市出身。自身が中学 1 年生の頃、離断性骨軟骨炎(OCD)を発症し約半年間の 投球制限を経験する。それをきっかけに理学療法士を目指す。自分と同じ経験は子供たちに させたくないという思いから、近隣大学と協力し、野球肘検診事業を立ち上げる。
JA 道央野球部トレーナーとして、社会人野球選手に対する障害予防・パフォーマンスアッ プを目的としたサポートを行う。また、主に NPB 所属選手に対するパーソナルトレーニン グ指導も個別で実施している。
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)に所属し、臨床やスポーツ現場での疑 問を解決するために研究活動を実施している。


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