【高校野球】投球中の体幹の側屈は諸刃の剣?球速アップに関連する体幹動作とそのトレーニング

投球動作中の体幹の非投球側への傾斜は球速を増大させる一因であることが様々な研究を通して明らかになっていますが、その一方で肩や肘に加わる負荷を増大させる諸刃の剣であることも示されています。そこで、今回はその動作の良否をチェックする方法を解説していきます。

目次

  1. 体幹の非投球側への傾斜の評価方法
  2. 修正トレーニング
  3. まとめ

いくつかの研究論文でこの動作が評価されていますが、その一つに「足関節から頭部中央までの距離が頭部の幅よりも大きく変位している」場合を過度な側屈と判別する方法が示されています。スポーツ現場においてはこのように視覚的に判断することが出来る指標として有用です。

図1に示す動作は典型的な不良動作です。肩関節最大外旋位の時点で、ステップ側足部の垂直線より頭部が非投球側へ側屈しています。一方で、図2に示す動作はそれを修正した後の動で、足部ラインと頭部の位置関係が修正されています。ステップ位置など、様々な要因が関与する動作ではありますが、球速と肩肘に加わる負荷のどちらにも関与しているため、注意が必要ですね。

図1 非投球側
図1:過度な非投球側への傾斜が見られる一例

図2 修正後
図2:修正後の動作の一例

この動作を招く身体的な要因として、少年野球選手を対象とした研究では、投球側の腹斜筋群の筋力不足を代償する動作として現れている可能性もあります。しかし、米国人を中心とした外国人投手はこの側屈動作を上手く使うことにより、力強い投球を行っています(詳しくはKoshi conのFBページをご覧ください)。この辺りを細かく分析するには、この動作のみならず股関節の使い方なども検討していく必要があるので、今回は割愛させていただきます。

そのため、この動作の原因が「身体の使い方」にあるのか「身体機能の低下」にあるのかを見極めることでアプローチ方法を変えることも重要ですね。

これまでにも挙げてきましたが、投球動作の改善にはできる限り実際の動作に近いトレーニング方法を用います。今回はアクセラレーション期での動作なので、胸を張った姿勢から体幹を回旋させる筋群の筋力低下が動作不良に関与します。そのため、バランスボールなどを用いて体幹を伸展させた姿勢から屈曲・回旋動作を取り入れることが重要です。ほかにも上肢の動きを変えることで負荷量を調整することなどのバリエーションはありますが、基本的な動作として、下記に示すトレーニングを行ってみてください!図3 バランスボール
図3:バランスボールを用いた体幹トレーニング

体幹の非投球側への傾斜の評価方法は「足関節から頭部中央までの距離が頭部の幅よりも大きく変位している」ことです。不良な選手には球速を上げるメカニクスとしてその動作を行っているのか?機能低下や他の動作不良によりそうせざるを得ないのか?この見極めが重要になります。

統計で得られることは真実ではあるが答えではない。ということを念頭において、一度チェックしてみてください!

この記事の作成者


内田智也内田智也
Tomoya Uchida

理学療法士

兵庫県明石市出身、理学療法士としてスポーツクリニックで勤務しながら、大学で三次元動作解析による投球動作の研究を行い、様々な論文を執筆している。これまでに小学生からプロ野球選手まで幅広い年代の治療やトレーニング指導を行っており、高校野球部のトレーナーとしてチームサポートも行っている。


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