【高校野球】球速アップ&障害予防に繋がるステップ膝動作~チェック方法とトレーニング~

投球動作は運動連鎖に基づく全身運動であり、下肢関節の動作不良が上肢関節に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。その中でも、非投球側の足部接地(以下、フットコンタクト)以降におけるステップ脚の膝関節の使い方により運動連鎖によって生じた力学的エネルギーを有効利用できるか否かがパフォーマンスアップや障害予防に繋がることも示されています。今回はそのチェック方法を解説していきます。

目次

  1. まずは側方から動画撮影
  2. 良好群と不良群の比較
  3. トレーニング方法
  4. まとめ

選手の非投球側にカメラを設置し、動画を撮影します。ハイスピードカメラであることが理想ですが、最近はスマートフォンでもスロー動画が撮影できるのでそれでも問題ないと思います。そして、撮影した映像におけるフットコンタクト、肩関節最大外旋位(Maximum External Rotation:MER)、ボールリリースの3枚の画像を抽出し、選手のステップ膝動作をチェックします(画像解析ソフトによって合成させたものを用いるのも便利です)。

各フェーズにおける

図1:各フェーズにおける動作を抽出します

評価基準は「フットコンタクトからボールリリースまでの区間においてステップ膝の前方移動が見られたか、否か?」とし、ステップ膝の前方移動が見られなかった場合を良好、それが見られた場合を不良と判断します。

imageJ

図2:imageJにより画像を合成した図(左良好、右不良)

上記の評価方法で群分けした選手の肘関節トルクと球速を比較しました。その結果、肘外反トルクは良好群0.0026±0.0009、不良群0.0039±0.0003 (Nm/kg*m*km/h)であり、不良群が良好群と比して有意に高値を示し (p<0.01)、球速は良好群111.3±9.2km/h、不良群100.8±7.5km/hであり、不良群が良好群と比して優位に低値を示しました(p<0.05)。

すなわち、膝が前方に移動する群は「肘の負担が大きく球速が遅い」という結果が得られました。図4に示すように膝が前方に移動する動作を呈している選手は要注意です。

各群の肘関節

図3:各群の肘関節トルク(左)と球速(右)の比較

良好な動作と

図4:良好な動作と不良な動作の比較

改善トレーニングの方法は「膝を固定して、股関節を動かす」ことです。投球において非常に重要な動作となります。以下に示すようなトレーニングを通して、その動きを獲得しましょう。上図は片脚デッドリフト、下図はバックランジです。どちらも、膝関節角度を変えずに股関節を屈曲させていくことが重要となります。姿勢が崩れずに行えているかどうかをチェックしてください。このような基本動作を習得した後に投球動作に介入することで効果を得られやすくなります。一度トライしてみてください。

ステップ膝動作

今回はステップ膝動作の良否の判別方法とそのトレーニングを解説しました。具体的に評価基準を明確に示すことは選手自身に動きの変化を示すためにも重要な介入方法となります。

 

評価ポイントは「膝が前方に移動しないこと」
トレーニングポイントは「膝を固定して股関節を屈曲させること」

です。是非選手の動きをチェックしてみてください!

この記事の作成者


内田智也内田智也
Tomoya Uchida

理学療法士

兵庫県明石市出身、理学療法士としてスポーツクリニックで勤務しながら、大学で三次元動作解析による投球動作の研究を行い、様々な論文を執筆している。これまでに小学生からプロ野球選手まで幅広い年代の治療やトレーニング指導を行っており、高校野球部のトレーナーとしてチームサポートも行っている。


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