球速アップと障害予防に関して ③ 【パワー】

前回までは、除脂肪体重を増加させるために筋肉量を増加させ、脂肪量を減少させることが重要であると解説していきました。

しかし、「シーズンオフにウエイトを行い身体が大きくなったが、パフォーマンスが上がった気がしない」と言われる選手が少なくありません。

その理由の一つに、身体を大きくしただけで身体を動かす速度を失っている可能性があります。

今回はその速度に注目して解説していきます。

 

目次

  1. 速さがパワーのキーワード
  2. 近年注目されているプライオメトリックエクササイズとは
  3. Stretch Shortening cycle(SSC)とは
  4. 球速と関連がある「メディシンボール投げと垂直跳びと三段飛びと」
  5. 体幹の捻転パワーは投球速度と正の相関がある
  6. 社会人野球チームのある年の投手陣のデータ
  7. まとめ

単に筋肉が大きくなれば球速が上がるかといえばそれだけでは不十分です。
次に重要となる因子としてパワーの要素です(下図)

速さがキー

パワーとは日本語で仕事率と表現され、仕事率とは単位時間あたりの仕事(関節モーメント×θ)のことです。
つまり、できるだけ速く、関節が強い力で動いたかでパワーは大きくなるということです。

速さがパワーのキーワードとなるのです。

そこで近年注目されているエクササイズとしてプライオメトリックエクササイズがあります(下図)。

プライオメトリックス

Prioが「さらに」,metricが「ながさ」を示し、予備伸張・反動動作を用いて行われる素早くパワフルな動作と定義されています。

その目的は「パワー」をアップさせることです。

 

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プライオメトリックエクササイズの中に、Stretch Shortening cycle(SSC)という筋を伸長位での瞬間的な最大収縮を利用する方法があります(下図)。

SSC

これは筋が持ち合わせている弾性エネルギー(力学的要素)と伸張反射(神経学的要素)を利用した機構になります。

但し、負荷量が大きくなりますので、実施には注意が必要です。

SSCを利用したメディシンボールバックスロー・反動を利用した垂直飛びと球速にはそれぞれ正の相関を認めたという報告があり(下図)、これらは野球チームにおける体力テスト等に用いやすい方法です。

SSC2

さらに、パワー系評価として両足3段飛びがあります。

下図が、両足3飛びの飛距離と球速にも正の相関を認めたという研究結果になります。

両足三段跳び

両足3段飛びも評価としてだけではなく、アップの中で組み込むなど、練習メニューとしても取り入れやすい内容かと思います。

 

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主に、体幹の評価として膝立ち位からの体幹を回旋させ反動を使ってメディシンボール投げ(膝立ちスロー)があります(下図)。
体幹SSC

体幹の捻転パワーは投球速度と正の相関を認めており、膝立ち位にすることで下肢の要素が除かれ、より体幹が強調された評価となります。

最後に、下図は筆者がサポートしている社会人野球チームのある年の投手陣のデータになります。
データを見ての通り、球速が速い投手である程、メディシンボールバックスロー・両足3段飛び共に飛距離が高い傾向となっています。
これを見ても、いずれの評価も投球速度と関連している可能性がありそうです。

結果1

結果2

まとめ

  • 球速アップにおいてパワーの理解が重要
  • パワー(仕事率)とは、単位時間あたりの仕事量を指し、短い時間で大きな力で関節を動かすことでパワーは大きくなる
  • パワーアップのためには、速さを強調したプライオメトリックエクササイズが有効
  • 筋を伸長位での瞬間的な最大収縮を利用したSSCは球速と関連する
  • パワーアップだけでは球速アップは見込めない

第3回目はパワーをキーワードに解説しました。
速さを求めるトレーニングを普段の練習メニューに組み込むと、体のキレが変わりパフォーマンスアップを実感できると思います。

野球選手に特化したプライオメトリックエクササイズ動画は下記の中でに紹介してありますので、ぜひ御覧ください!!

https://www.instagram.com/ogawa.lbp/

この記事の作成者


小川哲広小川哲広
Tetsuhiro Ogawa

理学療法士
https://linktr.ee/Te2.lbp

北星病院 リハビリテーション科 主任
JA 道央 野球部 トレーナー

北海道札幌市出身。自身が中学 1 年生の頃、離断性骨軟骨炎(OCD)を発症し約半年間の 投球制限を経験する。それをきっかけに理学療法士を目指す。自分と同じ経験は子供たちに させたくないという思いから、近隣大学と協力し、野球肘検診事業を立ち上げる。
JA 道央野球部トレーナーとして、社会人野球選手に対する障害予防・パフォーマンスアッ プを目的としたサポートを行う。また、主に NPB 所属選手に対するパーソナルトレーニン グ指導も個別で実施している。
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)に所属し、臨床やスポーツ現場での疑 問を解決するために研究活動を実施している。


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