球速アップと障害予防に関して ②【脂肪燃焼】

球速アップには除脂肪体重(体重―脂肪量)の増加が重要であると前回の記事で紹介しました。

球速アップと障害予防①【投球速度と筋量】

これは、筋肉量を増やすこと・脂肪量を減らすことの両輪が大切ということになります。

そこで今回は、脂肪量を減少させることについてデータを交えて説明したいと思います。

目次

  1. まずはエネルギー機構を理解しよう!
  2. 脂肪を燃焼させるための運動強度を理解しよう
  3. 目標心拍数を設定しよう
  4. トレーニング毎に目的を持つことが重要
  5. まとめ

脂肪を効果的に燃焼させるためには、エネルギー機構についての理解が必要です。
人間が動くためにはATPと呼ばれるエネルギー源が必要です。
運動中そのエネルギーを供給するために大きく分けて3つの機構が存在します(下記参照)。

生体エネルギー

1.ホスファゲン機構:運動強度に関わらず、初動時に必ず動員される機構です。
2.解糖系:中等度の運動時に動員される機構で主に炭水化物を利用しATPを供給します。
3.有酸素系:安静時、低強度の運動時に動員される機構で、主に炭水化物・脂質を利用しATPを供給します。

つまり、有酸素系のみを動員することで、効果的に脂肪細胞を燃焼することが可能になるのです。

エネルギー機構と運動強度についてです。

どのエネルギー機構が利用されているかの目安の一つのに「自覚的強度」があります。
有酸素系の目安となる自覚的強度は運動中に「ややきつい、または軽い」と感じる程度を指します。
最大パワーに対するパーセンテージとして20-30%程度になります。
また、運動の持続時間はおおよそ3分以上とされ、短時間すぎると有酸素系が利用されなくなります。
運動の種類はランニングか早めのウォーキングとなります。

効率よく脂肪を燃焼させようとするとだダラダラと汗ばむ程度に長時間運動ということになるのです。

エネルギー

有酸素系を最大限利用するためのより具体的な運動強度の設定方法についてです。

本来は血中の乳酸濃度を測定し、乳酸性作業閾値を基準に糖代謝か脂肪代謝かを明らかにするのですが、簡便ではありません。
そこで目標心拍数を設定する代替法がありますので、その設定方法を下記に示します。

目標心拍数

年齢と安静時心拍数を計算式に当てはめることで目標心拍数を設定することが可能です。
因みに、30歳で安静時心拍数が74拍だとすると目標心拍数が143拍となります。
上限脈拍を設定できるエアロバイクやルームランナーを用いることが有効です。
今だと、簡便に測定できるスマートウォッチ等もあるので、そういったものを利用することも有効になります。

下記は、ある社会人投手の体組成と球速との変化を追ったデータになります。

ある選手

2013年から2018年までは積極的な筋トレにて、身長あたりの除脂肪体重(Lean Body Mass;LBM)の増加と球速アップを認めていました。
しかし、試合の後半にスタミナが落ちることが悩みで、肉体改造として体脂肪のカットを目的とした有酸素運動を取りいれました

結果としては、2019年シーズンでは試合後半のスタミナ切れは少なくなり、球速は落ちることなく完投することが可能となりました。
その他の要因ももちろんありますが、筋肉量の増加と脂肪量の減少の両輪で除脂肪体重を減少させ、パフォーマンスが向上した一例でした。

脂肪を燃焼させようと、強度を強めて長時間トレーニングを行う選手に時々遭遇しますが、それでは脂肪を燃焼させることなく場合によっては筋肉量が減少してしまうことがあります。

トレーニング毎に目的を持つことが重要です。

まとめ

  • 球速アップにおいて除脂肪体重の増加が重要
  • 除脂肪体重の増加には、筋肉量増加と脂肪減少の両輪が重要
  • 脂肪減少にはエネルギー機構の理解が重要
  • 有酸素系を利用するには、自覚的強度・運動の種類・時間の把握が重要
  • 脂肪燃焼の効果的な運動強度は上限脈拍設定方法を用いる
  • 脂肪燃焼と共に筋肉まで燃焼しないように注意しなければならない
  • 脂肪燃焼だけで球速アップは見込めない

となります。

球速アップの第一歩は自分の体が現在どうなっているのかを知ることだと思われます。知った上でトレーニングを選択していきましょう。

下記もご参照ください

【高校野球~】足部の怪我を防げ!理想的な体脂肪率からトレーニングまで

この記事の作成者


小川哲広小川哲広
Tetsuhiro Ogawa

理学療法士
https://linktr.ee/Te2.lbp

北星病院 リハビリテーション科 主任
JA 道央 野球部 トレーナー

北海道札幌市出身。自身が中学 1 年生の頃、離断性骨軟骨炎(OCD)を発症し約半年間の 投球制限を経験する。それをきっかけに理学療法士を目指す。自分と同じ経験は子供たちに させたくないという思いから、近隣大学と協力し、野球肘検診事業を立ち上げる。
JA 道央野球部トレーナーとして、社会人野球選手に対する障害予防・パフォーマンスアッ プを目的としたサポートを行う。また、主に NPB 所属選手に対するパーソナルトレーニン グ指導も個別で実施している。
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)に所属し、臨床やスポーツ現場での疑 問を解決するために研究活動を実施している。


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