暑熱環境下でのリカバリー“アイスバス(冷水浴)

暑熱環境の中で、新チームづくりに向けたハードワークをする時期となりました。連日のハードワークを可能とし、実になるものとするには、試合や練習当日の疲れをリセットするためのリカバリーが大切になります。

目次

  1. アイスバスによる生体反応
  2. 効果を高めるアイスバスの実施方法
  3. 体を冷やすことで心身共にリフレッシュ

今回はリカバリーの中でも、暑熱環境下で活用することができるアイスバス(冷水浴)の方法についてご紹介します。

最近ではさまざまな競技において、疲労回復を目的としたアイスバスが活用されています。まずは、アイスバスを実施することによる生体反応について整理してみたいと思います。

アイスバス

図Aを見てください。大きく分けて4つの生体反応があり、それによって矢印に示しているような効果を得ることができます。
これらの効果は疲労回復にポジティブに作用してくれるので、「エネルギー消費を抑制し、気持ちもリフレッシュしたい」という場合でもアイスバスは有効だということになります。

なお、アイスバスは主に「筋肉の張りや痛みを緩和したい」場合に、より有効になります。
ではなぜ、アイスバスに入ると筋肉のダメージを抑制することができるのでしょうか。
これについては、図BにMohammedらの模式図を改変したものを掲載したのでご参照ください。

冷水浴

アイスバスのやり方

具体的なアイスバスのやり方を図Cに示しています。

理想的な温度は10〜20℃です。銭湯にある水風呂がだいたい17〜18℃であることを考えると、感覚としてはそれぐらいだと思っていいでしょう。

時間については10〜15分継続して浸かりましょう。どうしても10〜15分も耐えることができなければ途中で出ても構いません。ただし、合計で10〜15分になるように、何回かに分けて入ることをお勧めします。

アイスバスを実施するタイミングとしては、特に試合や練習後において筋肉に強い張りや痛みがある場合に速やかに実施するようにしてください。理想としては運動の30分後までに実施することが望ましいです。

アイスバスを実施する上で注意しなければならない点もあります。

例えば2部練習があり、練習間の休憩時間が1時間以内の場合にアイスバスを実施すると、身体冷却が起こり、体が動きにくくなってしまう可能性があります。
アイスバス後に運動をする場合には、少なくとも1時間以上の空き時間があり、再度ウオーミングアップができるという条件を忘れないでください。

また、皮膚に傷口があるときには、アイスバスに複数人が入ると感染等の恐れがあるため実施しないでください。

実施する上では、アイスバス専用の装置もありますが、簡易浴槽やポリバケツ、子ども用のビニールプール、大型コンテナなども活用することができます。また、部活動では学校プールの腰洗い場でも実施可能です。各現場の環境や予算にあわせて準備してみてください。

実際に実施した中で、特に良い効果を発揮した具体例を下記で紹介します↓

https://www.bbm-japan.com/baseballclinic/17293716/p2

この記事の作成者


笠原政志笠原政志
Masashi Kasahara

国際武道大学体育学部・大学院 准教授
博士(体育学)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
日本トレーニング指導者協会認定上級トレーニング指導士

千葉県習志野市出身。スポーツ選手の傷害予防と競技力向上に関するコンディショニングを科学的に捉えたアプローチを実践し、現場と研究の橋渡しの役割を担っている。特に今まで経験値による指導が多かった野球選手のコンディショニングについてを、客観的に示した上でのアプローチ方法について研究したものを現場に提供している。


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